子供の顎が小さいとどうなる?歯並びへの影響・原因・矯正治療を歯科医が解説
「うちの子、顎が小さいねと歯医者さんで言われた…」「永久歯がガタガタに生えてきたけど、このまま様子を見ていて大丈夫?」
お子さまの歯並びや顎の大きさについて、そんな不安を感じている保護者の方は少なくありません。
「顎が小さい」という状態は、見た目の問題だけではありません。
実は、子どもの歯並びが乱れる原因の多くは、歯を並べる土台である顎が小さく、永久歯が生えるスペースが足りないことにあるといわれています。
しかし上顎の成長は10歳前後でほぼ完了するため、顎の小ささに対応できる時期は限られています。
この記事では、子どもの顎と歯並びに関する保護者の方の疑問に、垂水さだまさ歯科・矯正歯科の院長であり、顎咬合学会認定医(咬み合わせ認定医)である定政が分かりやすくご説明いたします。
お子さまの年齢や状態によって、最適な治療法は異なります。「うちの子は今、何をすべきなのか」その答えを見つけるきっかけとして、ぜひ最後までお読みください。
目次
子供の顎が小さいとは?まず知っておきたい基本

「最近の子どもは顎が小さい」と耳にすることがありますが、ひとことで「顎が小さい」といっても、実際のお口の状態は一人ひとり異なります。
まずは、歯並びが悪いことと顎そのものが小さいことの違い、そしてどのようなサインがあれば注意したいのかを見ていきましょう。

「顎が小さい」とは顎の骨そのものが小さい状態
歯並びがガタガタしていると、「歯の生え方が悪かったのかな」と思われるかもしれません。しかし、私たちが小児矯正でまず見るのは、歯だけではなく、その歯が並ぶ「土台」である顎の骨です。
イメージしていただきたいのは、決められた大きさの椅子を、限られたスペースに並べる場面です。
永久歯そのものの大きさを自由に小さくすることはできません。それに対して、永久歯を並べる顎のスペースが不足していると、歯はきれいな一列に並ぶことができず、前後に重なったり、外側・内側にずれて生えてきたりします。
つまり、「歯が大きいから歯並びが悪い」というよりも、「歯の大きさに対して顎という土台が小さい」というバランスの問題として考えることが大切です。
垂水さだまさ歯科・矯正歯科では、こうした歯列だけを整えるのではなく、成長期のお子さまでは顎の骨格そのものを育て、永久歯が自然に並びやすい環境をつくることを重視しています。

顎が引っ込むタイプと歯がガタつくタイプの2つがある
診療をしていると、保護者の方が「顎が小さい」と感じるお子さまには、大きく分けて2つのタイプがあります。
ひとつは、横顔を見たときに下顎が後ろへ下がって見えるタイプです。
口元が前に出ているように見えたり、いつも口がポカンと開いていたり、いわゆるアデノイド顔貌に近い印象を受ける場合もあります。こうしたお子さまでは、鼻づまりや口呼吸などが背景にないかも確認します。
もうひとつは、正面から見たときには顎がそれほど小さく見えないものの、永久歯が生えてくると前歯が重なったり、八重歯になりそうだったりと、歯を並べるスペースが足りないタイプです。
「顔を見ると顎が引っ込んでいる」「乳歯のころから歯と歯の間にすき間がほとんどない」「永久歯が斜めに生えてきた」など、見た目に現れるサインは異なります。
どちらも「顎が小さい」という言葉でまとめられることがありますが、原因や治療すべき方向は同じとは限りません。そのため、見た目だけで判断せず、骨格や歯の位置、舌、呼吸まで含めて診断することが重要です。


ご家庭でセルフチェック|お子様にこんなサインはありませんか?
顎の発育不足は、歯科医院で検査をしなければ分からないものばかりではありません。日常生活の中にも、気づくきっかけがあります。
次のような様子がないか、一度チェックしてみてください。
- 何もしていないときに口がポカンと開いている
- 鼻ではなく口で呼吸していることが多い
- 寝ているときにいびきをかく
- 朝起きたときに口や喉が乾いている
- 乳歯の歯並びにほとんどすき間がない
- 永久歯の前歯が重なって生えてきた
- 八重歯になりそうな位置から歯が生えてきている
- 下顎が後ろに引っ込んで見える
- 出っ歯や受け口が気になる
- 食べ物をあまり噛まずに飲み込む
- 滑舌や発音が気になる
- 舌がいつも下の歯の近くにある
- 歯科検診で「永久歯が並ぶスペースが少ない」と言われた
もちろん、ひとつ当てはまったからといって必ず矯正治療が必要というわけではありません。
一方で、こうしたサインがいくつか重なっている場合には、顎の成長や呼吸環境に原因が隠れていることがあります。当院でも、相談に来られるお子さまには複数のサインがみられることが珍しくありません。
気になる項目があれば、一度成長の状態を確認してみることをおすすめします。

子供の顎が小さくなる主な原因

子どもの顎が小さくなる原因はひとつではありません。
もともとの骨格や歯の大きさといった「遺伝的な要因」に加え、噛む習慣、舌の位置、口呼吸など、成長過程で身についた「生活習慣・機能的な要因」も関係していると考えられています。
「遺伝だから仕方がない」と決めつけるのではなく、成長期だからこそ改善できる環境がないかを見ることが大切です。
遺伝による骨格への影響
顔立ちが親子で似るように、顎の形や大きさ、歯の大きさにも遺伝的な影響があります。お父さまやお母さまに歯のガタつきや出っ歯、受け口などがある場合、お子さまにも似た骨格的特徴が現れることがあります。実際、頭蓋顔面の成長には家族内で類似性がみられることが知られています。
ただし、遺伝的な傾向があるからといって、将来の歯並びまで決まっているわけではありません。
成長期は、顎の骨がまだ発育途中にあります。その時期に現在の骨格、噛み合わせ、舌や呼吸の状態を把握し、必要に応じて適切に介入することで、成長する方向を整えられる可能性があります。
これは、成長が終わった成人矯正にはない、子どもの矯正ならではの大きなメリットです。

やわらかい食事と噛む回数の減少
顎の発育には、食事のときに「噛む」という刺激も関係しています。
やわらかいものばかりを短時間で食べる習慣では、硬さのある食品を噛む場合に比べて咀嚼回数や顎の動きが少なくなる傾向があります。食べ物の硬さが、子どもの咀嚼回数や顎の動き、咀嚼筋の働きに影響することも報告されています。
だからといって、急に非常に硬い食べ物を与える必要はありません。
例えば、野菜をすべて柔らかく煮込みすぎず適度な歯ごたえを残す、根菜や肉、きのこ、海藻などさまざまな食感の食材を取り入れる、おやつにも噛む必要のあるものを選ぶ、といった工夫で十分です。
大切なのは「硬い物を食べれば顎が大きくなる」と単純に考えることではなく、成長期にしっかり噛む機会を失わないことです。

口呼吸・低位舌が顎の成長を妨げる
当院が顎の発育を見るうえで特に重視しているのが、「呼吸」と「舌の位置」です。
本来、何もしていないときの舌は上顎の内側に広く触れているのが理想的です。飲み込んだり話したりするときだけではなく、普段から舌が上顎に収まることで、口腔周囲の筋肉とのバランスを保ちながら成長していきます。
ところが口呼吸が習慣化すると、空気の通り道を確保するために口を開け、舌が下に下がった「低位舌」になりやすくなります。
すると、上顎の内側に舌が収まりにくくなり、狭い歯列や高い口蓋などを伴うケースがあります。研究でも、子どもの口呼吸と上顎の狭窄や高口蓋、不正咬合などとの関連が報告されています。ただし、口呼吸だけが原因と断定できるわけではなく、鼻や扁桃・アデノイドなど複数の要因を含めて評価することが重要です。
当院でも、歯並びの相談で来院されたお子さまを診察すると、「口がいつも開いている」「舌が下がっている」という状態が一緒に見つかることは珍しくありません。

なぜ口呼吸だと顎が育ちにくいのか
鼻呼吸ができていて、口を自然に閉じられている状態では、舌は上顎側に位置しやすくなります。
一方、口で息をするためには口を開ける必要があり、舌は空気の通り道を邪魔しないよう下へ下がりやすくなります。
上顎の横幅が狭いお子さまでは、この「口呼吸→舌が下がる→上顎が狭いままになりやすい→さらに鼻呼吸しづらい」という悪循環がみられることがあります。垂水さだまさ歯科・矯正歯科では、この悪循環を断ち切ることを顎顔面矯正の重要な目的のひとつとして考えています。
ただし、鼻づまりや口呼吸にはアレルギー性鼻炎やアデノイド・扁桃の肥大など、歯科だけでは解決できない原因もあります。その場合は耳鼻咽喉科などとの連携が必要です。

顎が小さいと歯並び・体にあらわれる影響

顎の小ささで最初に気づきやすいのは「歯並び」ですが、私たちは歯だけを見ているわけではありません。
顎や口の周囲は、噛む・飲み込む・話す・呼吸するといった機能にも関係しています。顎の発育不足や狭い上顎に口呼吸などが重なれば、歯並びだけでなく、睡眠や発音などに影響が現れることもあります。
ここでは代表的な影響を見ていきましょう。
永久歯が並びきらず叢生(ガタガタ)になる
もっとも分かりやすい影響が、永久歯が並ぶスペースの不足です。
顎の大きさに対して永久歯を並べる場所が足りないと、歯同士が押し合うように生えてきます。前歯が重なった「叢生(そうせい)」や、歯が不規則に並ぶ「乱ぐい歯」、犬歯が外側から生えてくる「八重歯」などが代表例です。
そして叢生は、見た目だけの問題ではありません。
歯が重なっているところには歯ブラシが届きにくく、プラークが残りやすくなります。その結果、将来的な虫歯や歯肉炎・歯周病のリスクを管理しにくくなります。
だからこそ当院では、矯正して歯を並べることだけをゴールにせず、MTM(メディカルトリートメントモデル)による虫歯予防も並行し、お子さまの将来のお口全体を守ることを大切にしています。
出っ歯や受け口につながることもある
「顎が小さい=必ず出っ歯になる」というわけではありません。
顎の成長する方向や上下の顎のバランスによって、出っ歯にも受け口にもなる可能性があります。
下顎が小さく後ろに位置している場合には、相対的に上の前歯が前へ出て見える「上顎前突」、いわゆる出っ歯の状態になることがあります。
一方、上顎の成長が不足し、下顎との前後的なバランスが崩れると、下の歯が上の歯より前に出る「反対咬合」、いわゆる受け口になる場合があります。成長とともに骨格差が大きくなれば、横顔で下顎が目立つ「しゃくれ」が気になるケースもあります。
どちらの場合も、単に前歯だけを動かせば解決するとは限りません。
特に骨格に原因がある場合は、成長期に上下の顎のバランスを確認し、必要な時期に骨格へ働きかけることが重要です。
口呼吸・いびき・睡眠時無呼吸や滑舌への影響
上顎が狭いお子さまでは、鼻腔も狭い傾向がみられることがあり、鼻呼吸のしづらさや口呼吸と関連する場合があります。
また、顎の発育や舌の位置、扁桃・アデノイドなど複数の要素が組み合わさることで、いびきや睡眠時の呼吸障害に関係するケースもあります。
急速拡大装置による上顎の拡大については、鼻腔の幅・容積が増え、鼻腔抵抗が低下することを示した研究があります。一方で、睡眠時無呼吸にはさまざまな原因があるため、「顎を広げれば睡眠時無呼吸が治る」と一律に考えることはできません。
また、舌の位置や歯並びは、サ行・タ行などの発音や、食べ物を噛んで飲み込む動作にも関係します。
「歯並びだけの問題」と考えず、お子さまの口が本来の機能を発揮できているかという視点で見ることが大切です。

子供の顎はいつまで大きくなる?放置するとどうなる

「顎は何歳まで成長するの?」「今始めるべき?」「もう少し様子を見ても大丈夫?」
これは、小児矯正のご相談で非常によくいただく質問です。
結論からいうと、顎の成長はある日突然止まるものではなく、部位や性別、個人の成長スピードによって異なります。ただし、骨格へ働きかけやすい時期には限りがあります。
上顎の成長は10歳前後でほぼ完了する
当院では特に、上顎の成長を考えるうえで10歳前後までの時期を重要視しています。
医院の治療方針では、「上顎の骨の成長は10歳ごろまでに約80%が進む」という考えをもとに、骨格に働きかけやすい成長期をできるだけ逃さないことを重視しています。
ただし、「10歳になった瞬間に上顎の成長が完全に止まる」という意味ではありません。顔面骨格の成長はその後も続きますし、治療適期には個人差があります。
医学的にも、7〜10歳前後は上顎の幅を拡大する治療で骨格的な効果を得やすい時期のひとつとされています。一方、年齢が上がるにつれて正中口蓋縫合などの成熟が進むため、同じ装置を使用しても骨格より歯に作用する割合が増えていきます。
また、下顎は上顎とは成長のタイミングが異なり、思春期の成長スパートまで大きく変化する可能性があります。
つまり「何歳だから治療する」というより、今どこまで骨格が成長しているのかを診断したうえで、治療のタイミングを決めることが重要です。

放置すると将来、外科矯正が必要になることも
骨格的な問題が大きいまま成長期を終えてしまうと、成人してから歯を動かすだけでは十分に改善できないケースがあります。
例えば、上顎と下顎の前後差が非常に大きい重度の受け口などでは、成長終了後に顎の骨を切って位置を変える外科矯正が治療選択肢となる場合があります。
もちろん、顎が小さいお子さまが全員将来手術になるわけではありません。
大切なのは、「様子を見る」ことと「何もしなくてよい」ことは同じではないということです。
他院で「永久歯が生えそろうまで様子を見ましょう」と言われることもあります。それ自体が間違いとは限りませんが、骨格に問題があるケースでは、今の年齢だからこそできるアプローチが残っている場合があります。
当院にも、他院で「様子を見ましょう」と言われた後にご相談へ来られるお子さまがいらっしゃいます。実際に診察してみると、成長期を利用して治療できるケースもあります。
一度診断を受け、「本当に今は待ってよい状態なのか」を確認しておくことが大切です。
子供の顎が小さい場合の矯正治療|「顎を広げる」という考え方

顎が小さく、永久歯のスペースが不足しているお子さまに対して、当院が大切にしているのが「歯を並べる前に、歯が並ぶ土台を整える」という考え方です。
これは、黒江和斗先生が提唱してきた顎顔面矯正の考え方とも共通しています。
不正咬合を単なる歯の位置の問題として見るのではなく、歯槽骨・顎骨・頭蓋骨と、それらを取り巻く軟組織の発育の問題として捉え、成長期に骨格へアプローチするというものです。
そのため当院では、年齢と成長状態を見極めながら「顎を広げ、永久歯が並ぶスペースを確保する」ことを治療の出発点としています。
顎を広げて永久歯のスペースを作る|急速拡大装置という第一選択
顎顔面矯正で中心となる治療のひとつが「急速拡大装置」です。
上顎は左右の骨が正中口蓋縫合という部分でつながっています。成長期でこの部分の成熟が進む前に、固定式の装置を使って少しずつ力をかけ、上顎を左右へ拡大していきます。
目的は単純に「歯列を横へ広げる」ことではありません。
歯が並ぶ骨格そのものに働きかけ、永久歯のためのスペースを確保することが重要です。
また、上顎のすぐ上には鼻腔があります。そのため上顎を拡大すると鼻腔の横幅も増加します。研究では、急速拡大によって鼻腔容積が増え、鼻腔抵抗が低下する傾向も報告されています。鼻呼吸しやすい環境づくりにつながる可能性がある点は、顎顔面矯正の大きな特徴のひとつです。
当院では、取り外し式ではなく「固定式」の急速拡大装置を採用しています。
取り外し式の装置は、お子さま自身で外せることがメリットである一方、「最初は頑張っていたけれど、だんだん装着できなくなった」「寝ている間に外してしまう」といったことが起こる場合があります。
固定式であれば、お子さま本人の頑張りだけに治療結果が左右されにくく、計画的に治療を進めることができます。
当院では、ご家庭で1日1回ネジを回していただきながら拡大を進め、装置の使用期間は症例によりますが約6か月をひとつの目安としています。

治療は年齢によって変わる|3歳から10歳以降までの進め方
子どもの矯正では、すべての年齢に同じ装置を使うわけではありません。
当院では、歯の生え変わりや顎の成長段階を見ながら、おおむね次のように治療方法を考えます。
3〜5歳ごろ
受け口や舌・口まわりの筋肉の癖がみられる場合には、ムーシールドやプレオルソなどを使用し、舌の位置や筋肉の使い方を整える治療を検討します。
6〜8歳ごろ
上顎の骨格にアプローチしやすい時期です。顎幅が不足している場合には、固定式の急速拡大装置を用いて永久歯が並ぶための土台をつくります。
9歳以降
生え変わりの状況によっては、急速拡大装置による骨格的な治療とマウスピース矯正などを組み合わせ、骨格と歯の位置をバランスよく整えます。
10歳以降
骨格の成熟が進んでいる場合でも、状態によっては急速拡大装置とインプラントアンカーなどを併用することで、骨格へアプローチできるケースがあります。
つまり、「10歳を過ぎたらもう何もできない」というわけではありません。
実際に当院では、11歳の時点で受け口や上顎の成長不足がみられ、将来的に外科矯正が治療の選択肢となる可能性が考えられたお子さまに対して、急速拡大装置とインプラントアンカーを併用した治療を行った症例があります。
「もう11歳だから、顎を広げる治療は難しいのでは?」と思われるかもしれませんが、骨格の状態や成長段階によっては、この時期からでも骨格へアプローチできる場合があります。
ここでは、その実際の症例をご紹介します。
11歳でも手術を回避できる?急速拡大装置+アンカーを併用した矯正治療の症例

こちらの症例について詳しくはこちら:
>> 11歳でも手術を回避できる?急速拡大装置+アンカーを併用した矯正治療の症例
ただし、年齢が上がるほど治療方法の選択肢が変わる可能性があるため、「まだ早い」と待ち続けるより、まず現在の成長段階を確認しておくことをおすすめします。
年齢別の治し方については、受け口の記事でも詳しく解説しています。
顎を広げると顔つきは変わる?親御様が気になる変化

「顎を広げたら、顔まで横に広がってしまうのでは?」
「治療を始めてから口元が出て見えたらどうしよう」
顎顔面矯正をご説明すると、こうした質問をいただくことがあります。
実際、骨格に働きかける治療ですから、治療の途中で顔や口元の印象に変化を感じることはあります。
だからこそ当院では、「顔はまったく変わりません」とお伝えするのではなく、治療中にどのような変化が起こる可能性があり、最終的に何を目指しているのかを事前に知っていただくことが大切だと考えています。
治療中に一時的に口元が出て見えることがある
急速拡大装置で上顎を広げている途中には、一時的に前歯の間にすき間ができたり、歯の位置が変化したりすることがあります。
そのため、治療途中の段階だけを見ると「前より歯が出た気がする」「口元が少し出て見える」と感じる親御さまもいらっしゃいます。
また、上顎は鼻の土台ともつながっているため、拡大に伴って鼻の横幅など軟組織にもわずかな変化が生じる場合があります。近年のシステマティックレビューでも、急速拡大後には鼻翼幅などに平均数mm以内の変化が報告されていますが、変化の程度には個人差があります。
こうした変化は、治療の途中経過として現れるものを含みます。
顎顔面矯正では、拡大した直後の顔や歯並びだけで最終結果を判断するのではなく、その後の歯の移動や成長まで含めて経過を見ていくことが重要です。
最終的に鼻が通り、顔立ちのバランスが整っていく
急速拡大装置の目的は「顔を大きくする」ことではありません。
狭かった上顎を本来必要な幅へ近づけ、歯が並ぶスペースと、舌が収まりやすい口腔内環境をつくることです。
拡大によって一時的に前歯の間にすき間ができても、その後の歯の移動や矯正治療によって適切な位置へ整えていきます。
また、上顎が広がることで鼻腔の横幅や容積が増加し、鼻の空気抵抗が低下することも研究で確認されています。鼻呼吸がしやすくなれば、口を閉じ、舌を本来の位置に置きやすい環境にもつながります。
さらに、成長途中のお子さまでは、歯列だけでなく中顔面を含めた骨格全体の発育を見ながら治療を進めるため、最終的には上下の顎と口元、横顔のバランスを整えることを目指します。
ただし、顔貌の変化にはもともとの骨格や成長方向による個人差があります。
だからこそ、治療前に「どのような変化が予想されるか」をしっかり説明し、保護者の方と同じゴールを共有することが大切です。当院では無料カウンセリングの段階から、お子さまの現在の状態と治療の考え方を丁寧にお伝えしています。

ご家庭でできる顎の成長を促す工夫

顎の発育を考えるうえでは、歯科医院での治療だけでなく、毎日の食事や呼吸の習慣も大切です。
ただし、「これをやれば自宅だけで顎を広げられる」という方法はありません。すでに骨格的な問題やスペース不足がある場合には、家庭での工夫だけでは改善できないこともあります。
まず専門的な診断を受けたうえで、治療と並行して生活習慣を整えるという考え方が大切です。
よく噛んで食べる習慣をつける
ご家庭で今日から始められるのが、「噛む機会を増やす」ことです。
例えば、
- 根菜や葉物野菜など、ある程度歯ごたえを残して調理する
- 肉や魚を細かくしすぎず、年齢に合った大きさで出す
- きのこ、海藻など異なる食感の食材を取り入れる
- 一口ごとに急いで飲み込まず、しっかり噛む習慣をつける
- おやつも、年齢に応じて噛み応えのある食品を選ぶ
といった工夫があります。
「顎を育てるにはガムがいいですか?」と聞かれることもあります。
シュガーレスガムなどを噛むことは咀嚼筋を使う機会にはなりますが、ガムを噛めば小さな顎が治るわけではありません。硬いものを無理に噛ませたり、長時間ガムだけを噛ませたりする必要もありません。
さまざまな食材を左右の歯でバランスよく噛み、食事そのものを通じて口をしっかり使うことを意識してみてください。
鼻呼吸を意識し口呼吸の癖を見直す
もうひとつ、ご家庭でぜひ見ていただきたいのが、お子さまが何もしていないときの口元です。
テレビを見ているとき、ゲームをしているとき、宿題をしているとき、車に乗っているときなどに、唇が自然に閉じているのでしょうか。
いつ見ても口がポカンと開いている場合、単なる癖ではなく、鼻が通りにくい、舌を上に置けない、上顎が狭いなどの原因が隠れている可能性があります。
「口を閉じなさい」と注意するだけでは解決しないことも多いため、まず「なぜ鼻ではなく口で息をしているのか」を調べることが大切です。
また、インターネットやSNSでは「自分で顎を広げるトレーニング」「割り箸を噛めば受け口が治る」といった方法を見かけることがありますが、自己流で強い力をかけることはおすすめできません。
噛み合わせの状態によっては、歯に余計な負担がかかったり、本来動かしたくない方向へ歯を動かしたりする可能性があります。
顎の幅や上下の骨格差は見た目だけでは正確に判断できません。まず歯科医院で診断を受け、お子さまに必要な方法を確認してください。
顎が小さい子供の矯正にかかる費用と期間の目安

子どもの顎を広げる矯正治療は、年齢や骨格、歯の生え変わり、使用する装置によって費用・治療期間が異なります。
当院では現在、プレオルソ・ムーシールドが99,000円(税込)、顎顔面矯正が418,000円(税込)、子ども用マウスピース矯正が495,000円(税込)、調整料が4,400円(税込)です。治療内容や費用は変更される場合がありますので、実際の治療開始前に必ず最新の内容をご確認ください。
急速拡大装置そのものを使用する期間は約6か月がひとつの目安ですが、その後の歯の生え変わりや歯列の調整まで含めた治療期間は、お子さまによって異なります。
無料カウンセリングでは、現在のお口の状態を確認し、必要な治療やおおよその期間、費用についてご説明しています。
顎が小さいお子様の治療で当院が選ばれる理由

子どもの矯正は、装置をつけて歯を動かせば終わりではありません。
これから何年、何十年と使っていく歯だからこそ、「きれいに並んだか」だけでなく、顎がどう育つのか、きちんと噛めるのか、鼻で呼吸できる環境があるのか、虫歯になりにくい状態をつくれているのかまで考える必要があります。
垂水さだまさ歯科・矯正歯科では、お子さまの「今の歯並び」ではなく、「これから成長した先のお口」を見据えて治療を行っています。
院長自ら一人ひとりに合わせた急速拡大装置を作成
当院の大きな特徴のひとつが、顎顔面矯正に使用する急速拡大装置を、院長の定政自身がお子さま一人ひとりに合わせて製作していることです。
急速拡大装置は、単に「顎を広げる器具」ではありません。
どの歯を固定源にするのか、どの方向へどれだけ力をかけるのかなど、お子さまの骨格や歯の生え方を見ながら設計する必要があります。
そのため当院では技工所へ一律に外注するのではなく、実際に診断を行う院長自身が装置を製作しています。
また、顎顔面矯正の考え方や技術は一度学べば終わりではありません。院長自身が継続してセミナー・勉強会へ参加し、新しい知見や技術を日々の治療に取り入れています。
診断する人と装置をつくる人が同じだからこそ、一人ひとりの口腔内をイメージしながら細かな調整ができると考えています。

顎咬合学会認定医による未来の咬み合わせを見据えた治療
院長・定政は、日本顎咬合学会の認定医(咬み合わせ認定医)です。
子どもの矯正で大切なのは、写真を撮ったときに歯がまっすぐ並んでいることだけではありません。
上下の歯がきちんと噛み合い、食事をしっかり噛めること。そして、その噛み合わせが成長後も無理なく機能することが重要です。
特に子どもの場合、治療している間にも顎は成長し、乳歯から永久歯への生え変わりも進みます。
そのため当院では、目の前のガタガタだけを動かすのではなく、「この子の顎が今後どの方向へ成長していくのか」「永久歯が生えそろったとき、どんな噛み合わせになるのか」まで考えながら治療計画を立てています。
歯並びだけでなく、顎の機能と将来の噛み合わせまで考えることが、長く健康なお口を保つことにつながると考えています。
歯を抜かない治療・MTM予防・完全個室の無料カウンセリング
当院の小児矯正では、成長期という子どもならではの力を利用して顎の骨格を整え、できる限り永久歯を抜かずに歯を並べられる環境をつくることを目指しています。
ただし、すべてのお子さまに非抜歯を保証できるわけではありません。現在の骨格や永久歯の大きさ、生える位置などを検査したうえで、その子にとって負担が少なく、将来的にも安定しやすい治療を考えます。
また、矯正中は装置によって歯磨きが難しくなることがあります。
そこで当院では、科学的根拠に基づく予防プログラム「MTM(メディカルトリートメントモデル)」を導入し、一人ひとりの虫歯リスクを評価しながら予防・メンテナンスを行っています。
せっかく歯並びがきれいになっても、その途中で虫歯になってしまっては意味がありません。「矯正」と「虫歯予防」の両方から、お子さまのお口を守ります。
さらに、当院では矯正の無料相談を行っています。初回相談では、お悩みをお伺いしたうえでパノラマ撮影やiTeroによる口腔内スキャンなどを用いて現在の状態を確認し、その後必要に応じて詳しい検査・診断へ進みます。
相談しにくい内容も落ち着いてお話しいただけるよう、プライバシーに配慮した環境を整えています。
また、毎週土曜日は矯正治療に特化した診療日としており、学校がお休みの日に通院しやすい体制にしています。
「まだ治療するか決めていない」という段階でも構いません。
まず現在の顎がどのように成長しているのかを知るところから、一緒に考えていきましょう。
まとめ:お子様の顎が小さいと感じたら
子どもの「顎が小さい」という状態は、単に顔が小さいという意味ではありません。
歯が並ぶ土台となる顎の幅が不足していると、永久歯が並びきらず、叢生・八重歯・出っ歯・受け口などにつながる可能性があります。
また、その背景には遺伝だけでなく、噛む習慣、口呼吸、舌が低い位置にある低位舌など、成長期の口腔機能が関係している場合もあります。
だからこそ当院では、歯だけを動かして見た目を整えるのではなく、「なぜこの歯並びになったのか」を考え、必要なお子さまには急速拡大装置を用いて顎という土台から整える顎顔面矯正を行っています。
ご家庭でも、よく噛んで食べることや、口がポカンと開いていないかを確認することはできます。しかし、すでに骨格の幅が不足している場合、ご家庭のトレーニングだけで顎を広げることはできません。
そして何より大切なのが「時期」です。
成長期には、骨格そのものに働きかけられる可能性があります。年齢が上がるにつれて治療の方法は変わっていきますが、10歳を過ぎたからといって必ず手遅れになるわけでもありません。当院では、成長状態に応じて急速拡大装置やマウスピース、インプラントアンカーなどを組み合わせ、外科矯正を避けられる可能性を検討するケースもあります。
「まだ乳歯だから早いかな」
「永久歯が生えてからでいいと言われた」
「他の歯医者さんでは様子を見ましょうと言われた」
そのような場合も、一度ご相談ください。
今すぐ治療する必要がなければ、いつまで経過を見てよいのかを知っておくだけでも意味があります。反対に、今だからこそできることがあるなら、大切な成長期を逃さずに済みます。
垂水さだまさ歯科・矯正歯科では、完全個室で無料カウンセリングを行っています。
「様子を見ましょうと言われたけれど、本当にこのままでいいのかな」と少しでも気になっている方も、ぜひ一度ご相談ください。
お子さまの今のお口の状態を確認し、将来を見据えて、今できることを一緒に考えていきましょう。


定政 克典
- インビザラインドクター
- 顎咬合学会(咬み合わせ認定医)
- 国際口腔インプラント学会(ICOI認定医)
本記事は、垂水さだまさ歯科・矯正歯科 院長・定政克典(顎咬合学会 咬み合わせ認定医)が執筆・監修しています。記事の内容は診療ガイドラインや学会発表等をもとに作成していますが、症状や適切な治療方針には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず歯科医院にご相談ください。



